JR宮古駅から歩いて10分足らず、昔ながらの商店街・末広商店街のなかほどに「割烹 おかめ」があった。このあたりも津波による被害を受けているが、「割烹 おかめ」は建物が流されずに残ったことから、2ヶ月後の5月には営業を再開。ボランティアや自宅の台所が使えない地域の人たちに、温かく、そして心を満たす食事をいち早く届けた。
宮古港に水揚げされる新鮮な海の幸もいいが、今回のお目当ては、龍泉洞黒豚。あっさりと、しゃぶしゃぶでいただいた。

 

「龍泉洞黒豚」の柔らかい肉と脂身の甘みを楽しむ
地もの野菜と一緒にさっぱりとポン酢で

岩手の食の楽しみは、三陸の新鮮な海の幸だけではない。例えば、日本三大鍾乳洞の一つ、龍泉洞で有名な岩手県下閉伊郡岩泉町で育てられている「龍泉洞黒豚」。標高700mの高原で放牧飼育している母豚に、病気に強く健康的な子豚を産ませているのだという。黒豚専用の飼料を与えて、通常よりも長い期間じっくり飼育しているため、きめ細かく、脂に甘みのある肉質が特徴だとか。

「割烹 おかめ」では、10年前から「龍泉洞黒豚」がメニューに登場。今はしゃぶしゃぶと陶板焼きで提供されている。しゃぶしゃぶ用にスライスされた肉を見ると、赤身と脂身が半々といったところ。女将の宇都宮松枝さんは「脂身ではなく、“白身肉”というのだと精肉店から聞いています。その脂身に甘みがあるんですね」と語る。

薄くスライスされているので、しばらく湯にくぐらせるだけで十分。ポン酢でさっぱりといただく。口の中で赤身と脂身が相まって、程よい歯ごたえと柔らかさ、そして甘みを楽しむことができる。豚肉の脂身独特の臭みのようなものは全くない。いくらでも食べられそうだ。「最近はご高齢者の方も、魚ばかりではなく肉類も食べなさいと言われてますでしょう? 週に3回、龍泉洞黒豚を食べにいらっしゃるお客様もいますね」と宇都宮さん。一緒にいただく椎茸や白菜などの野菜は、地元宮古産。豆腐も宮古市川井で作られているものだそうで、地元の食材を大切に使っている。

白身肉といわれるほど多い脂身が、龍泉洞黒豚の身上

白身肉といわれるほど多い脂身が、龍泉洞黒豚の身上

「割烹 おかめ」店内

「割烹 おかめ」店内

 

その日揚がったばかりの新鮮な海の幸を
宮古市唯一の地酒と味わう

そしてもう一品は、やはり海のものを。宮古港に水揚げされたカンパチのかま焼きは日本酒と合う。宮古市に唯一残る酒造会社の菱屋酒造店は、江戸時代末期の嘉永5年(1852)に創業した老舗酒造会社。震災の日は一階天井まで津波に浸かったものの、貯蔵タンク内にあった9,000ℓ余りの酒が被災を免れ、奇跡の酒と呼ばれた。現在、復興を祈願して出されている特別純米酒「フェニックス」が人気だ。

カンパチのかま焼

カンパチのかま焼

カンパチはたっぷりと脂が乗り、身には弾力があった。「やはり、すぐそばの宮古港で、その日に水揚げされたばかりの魚と、都心部まで一日陸送された魚は違うんでしょうね。今が旬のサンマも、お客様も味が全く違うと言って喜んでくださいます」と宇都宮さん。これこそが、産地に足を運んでこそ味わえる食の魅力、フードツーリズムの醍醐味だろう。例えば、「割烹 おかめ」の、今なら「サンマづくしの定食」、鮭の季節になれば「紅葉定食」、1月から3月は「カニづくし定食」といった旬の味覚を存分に味わえる定食も、季節ごとに宮古を訪ねる楽しみを与えてくれる。

「割烹 おかめ」の開業は昭和初期、もう90年ほどの歴史を刻んできた。料理屋の一方で、麹屋も営んでおり、夜の食事に来られていたお客さんが、麹の注文もされていた。地元で愛され、信頼されてきた店だからこそ長く営業されてこられたのだろう。今では、三人の息子さんたちが店を支えているのも頼もしい限りだ。

1階の半分ほどまで津波が来たが、震災2カ月後に再開

1階の半分ほどまで津波が来たが、震災2カ月後に再開

 

【割烹 おかめ】

☎0193-62-2456

住所:岩手県宮古市末広町1-18

営業時間:11:30〜14:00 17:00〜21:00

定休日:月曜日

駐車場:有(2台)

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