岩手県で立ち上げられたジオパーク認定に向けての動きは、東日本大震災で1年間の休止を余儀なくされたが、再開後は3県16市町村で一体的に進められることとなった。そして、平成25年(2013)9月、青森県八戸市から宮城県気仙沼市までの南北約220km、東西約80km、海岸線の総延長300kmのエリアが「三陸ジオパーク」として認定された。ジオパークとしては、日本一の広さを誇る。
三陸ジオパークの魅力や今後期待される役割などを、三陸ジオパーク推進協議会の主任ジオパーク推進員、関 博充さんにおうかがいした。

 

地質的にも文化的にもつながっている3県で
一体的に「三陸ジオパーク」の取り組みを

「ジオパーク」という言葉を耳にしたことはあっても、詳しく知る人はまだまだ少ないかもしれない。ジオ(geo)は“地球”や“大地”という意味であり、地球活動で造られた地形や地層、断層などを見てその成り立ちを知るとともに、その大地との関わる生態系や人々の暮らしを学ぶ場所というのがジオパークだ。

唐桑半島(気仙沼市)

唐桑半島(気仙沼市)

震災前から岩手県沿岸部をエリアにした日本ジオパークの認定に 向けて動きは始まっていた。「三陸には昔から、地震や津波に立ち向かってきた歴史があり、そうした人々の暮らしを紹介することもジオパークのテーマの一つだと考えていたのです」と三陸ジオパーク推進協議会の関博充さん。平成23年(2011)2月に、いわて三陸ジオパーク推進協議会が立ち上げられたが、その1ヶ月後に東日本大震災があり、活動は休止した。

しかし、津波による被災から立ち上がろうとする今の人々の姿も含めて、地球活動と三陸の関わりをテーマとしたジオパークが作れるのではないかと、今度は青森県と宮城県も加わった3県で三陸ジオパーク推進協議会が設立されたのが、平成24年(2012)11月のこと。「三陸は地質的にも文化的にもつながっており、3県が三陸として一つになれないかという思いもありましたし、連携し一体的に盛り上げていくことが観光客の誘致にも、大きな力になると考えたのです」(関さん)。

奇跡の一本松(陸前高田市)

奇跡の一本松(陸前高田市)。地震や津波の被災体験を学ぶのも「三陸ジオパーク」の重要な役割

「三陸ジオパーク」の魅力について、関さんは「5億年前にも遡る地球活動の痕跡が、海岸線の奇岩や断崖、そして龍泉洞などの鍾乳洞などに見られるのは興味深いですよね。岩手県の鍾乳洞の多さは、沖縄県についで2番目とされています。その石灰質の地質が、八戸市や大船渡市、住田町ではセメント産業に結びついているわけですし、また、鉄鉱石の豊富な釜石では鉄鋼産業が盛んなわけです。大地の恵みが人々の暮らし、そして地域経済を支える産業といかに結びついてきたかを、自分の目で見て学べるのがジオパークなんです」と語っている。

釜石鉱山(釜石市)

釜石鉱山(釜石市)

 

北部と南部で異なる海岸線の表情や
そこで育まれる海の幸を楽しむ

三陸ジオパークのなかでも、海岸線のようすが北部と南部で違うことは地図を見てもわかる。北の沿岸部が比較的なだらかな海岸線であるのに対し、南の沿岸部はノコギリの歯のように、入り組んだ複雑な海岸線を描いている。リアス海岸だ。これはそもそも成り立ちが異なるためで、北部は「海成段丘」といって、かつて海底にあった地面が高く盛り上がってできた断崖が特徴的。盛り上がった大地は、かつての海底の堆積物でできており、例えば岩泉町の山間では、2億5千万年前の海底の地層を見ることができるという。一方、南部のリアス海岸は、河川の侵食で山と谷が連続する険しい地形ができていたところ、海面の上昇で谷に海水が入り込み、山の部分が岬となって、入り組んだ海岸線になったのだとか。海から見ると、そうした奇岩や断崖などに、何億年前の地層を見ることができる。各地で行われている遊覧船やシーカヤッククルーズなどで、三陸ジオパークを楽しむのもおすすめだ。

穴通磯(大船渡市)

穴通磯(大船渡市)

合掌岩(大船渡市)

合掌岩(大船渡市)

そして、こうした地形や地質が三陸の食にも大きく関わっているという。「山のほうに行けば山菜やきのこの種類が豊富で、このあたりの家庭でよく食べられています。また、三陸の特産品のワカメも湾ごとに味が違うというので、それぞれに真崎ワカメなどと名前をつけていますね」。そういえば、三陸に来て思うことは、ワカメ、アカモク、マツモといった海藻が種類豊富でおいしい。これもまた、地球活動の恵みなのだろう。

「日本一広いジオパークゆえの多様な表情をアピールできる一方で、全市町村で一体的な取り組みを行うための調整や、各地のジオガイドさんの育成も課題です。これからは、三陸というエリアの魅力から、さらに16市町村それぞれの見どころや楽しみ方に落としていけたらと考えています。三陸ジオパークにはおいしいものがある、美しい風景がある、そしてトレイルやカヤック、遊覧船などのアクティビティーがある。これらを一体的に訴求していきたいですね」と抱負を語られた。

『ひょっこりひょうたん島』のモデルともいわれる蓬莱島(大槌町)

『ひょっこりひょうたん島』のモデルともいわれる蓬莱島(大槌町)

関博充さん

関博充さん

【三陸ジオパーク推進協議会】

住所:岩手県宮古市五月町1-20 宮古地区合同庁舎内

0193-64-1230

http://sanriku-geo.com

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