青く澄んだ空と黄金色の稲穂が微かな収穫の香りを漂わせている季節に、おいしい食との出会いを求めて、はじめて「東北」という大地を訪れた。未知の遠い場所での出会いや発見を期待しながら、事前の情報収集はあえて最小限にとどめた。いや、実は「未知」とは言えない。2011年3月11日の午後、テレビ画面を通して衝撃を受けたあの場所の光景はいまでもはっきりと覚えている。4年半の歳月が流れ、やっと足を運ぶことができた。

震災の跡はまだまだ消えていない。だが暮らしは確実に前に進んでいるような気がする。部外者ゆえの感想とのおしかりを受けるかもしれないが、自然の猛威を目の当たりにしてもなお、今回訪れた石巻市や気仙沼市は、人々の暮らしが海や浜そのものとの共生の中にあるのではないかと思った。私は、その海の恵みと浜で流れる時間に身をまかせながら、三陸の食を通して自然と共にある暮らしの一端に触れることができた。

海の市シャークミュージアム

海の市シャークミュージアム

気仙沼市魚市場とシャークミュージアムを見学したあと、手に取ったパンフレットから一目ぼれした「北かつまぐろ屋 田中前店」で海の幸を頂いた。鉄板から湯気が立ち上る「かまトロステーキ」の写真に目が留まり、「気仙沼の遠洋かつお・まぐろ漁業組合の直営。天然の国産まぐろと旬の魚介類を使用した海鮮料理が自慢です。」とのPR文は、食べないときっと後悔するだろうことを予感させた。

暖簾をくぐると、素敵な笑顔の店員さんが迎えてくれた。堀コタツのテーブルが奥の部屋に四つ並んでいるが、厨房を覗ける手前のテーブル椅子(8人掛け)に座った。常連さんと思われる人たちが食べている海鮮丼にも少し心惹かれたが、私がメニューから選んだのは、もちろん産地ならではの「かまトロステーキ定食」である。どんなものが出て来るのかと、焼き上がるまで何度も厨房を見ながら待つことおよそ10分、ジュ、ジュと音を立てながら運ばれてきた熱々の骨付きステーキは、想像よりもはるかにワイルドだった。

かまとろステーキ

かまとろステーキ

同行の方々も皆思わずワーという驚きの声をあげたかと思うと、すぐに愉快な笑顔になった。ポン酢と大根おろしをかけ、気がつくと話をするのも忘れてカマから肉をほぐしていた。このときから、私にとっての三陸は、かまステーキの味を覚えた場所になった。

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